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繊維to繊維リサイクルの実現に向けて~新BHET法編

「水平リサイクル」という言葉が注目されています。「水平リサイクル」とは、使用済製品を原料として用い、同一種類の製品を製造するリサイクルのことです。たとえば、使用済ペットボトルを原料として再びペットボトルを製造するなどです。わたしたちは繊維の水平リサイクル、繊維to繊維リサイクルの実現に向けて、さまざまな技術の開発や仕組みづくりを進めています。今回は、リサイクル新技術について、ご紹介します。

マテリアルリサイクルとは

現在、市場で多く出回っているリサイクルポリエステル繊維は、透明なペットボトルを原料として分子構造を維持したまま、溶かし、また固めるといった機械的リサイクル(マテリアルリサイクル、メカニカルリサイクル)によって再生されたものが一般的です。
しかしながら、マテリアルリサイクルは、添加物や付着物の蓄積および熱による物性劣化によって、何度もリサイクルし続けることは難しく、また再生用途も限定される場合があります。

ケミカルリサイクルについて

従来、色がついているポリエステル繊維製品から、ポリエステル繊維に再生する、繊維to繊維のリサイクルには、ケミカルリサイクル技術(DMT法)が使われてきました。

ケミカルリサイクル(DMT法)では、素材の分子構造を個々のユニットに分解して、異物を取り除き、元の原料に戻すことができるため、石油由来原料に近い品質に再生することもでき、幅広い用途に使用することができます。

しかし、化学結合を分解し、再度結合させる工程をとるためにエネルギーが必要です。私たちは、この課題を解決できる手法の検討をおこなってきました。

BHET法とは

ケミカルリサイクルの手法の中には、透明のペットボトルからペットボトルにリサイクルする際にも用いられる「BHET法」というものがあります。「DMT法」と比較して、工程が少ないためにエネルギー消費量が少ないという点がある一方で、この手法では、着色されたポリエステル繊維から染料などの異物を完全に除去できず、再生されたポリエステル原料が変色するなど、品質の高いポリエステル原料にリサイクルすることが困難でした。

新たなリサイクル技術の開発

2022年5月18日、このBHET法を用いて、着色されたポリエステル繊維であっても、石油由来と同等の品質のポリエステル原料に再生できる新たなリサイクル技術を開発しました。

DMT法によるケミカルリサイクルの流れ

この新リサイクル技術(新BHET法)は、従来のBHET法に新たに開発した解重合触媒を用いることで、再生ポリエステル原料の変色を抑制することが可能で、石油由来のポリエステル原料と同等の品質の再生ポリエステル原料にリサイクルすることができます。この新リサイクル技術においては、DMT法よりも工程数が少ないためにエネルギー消費量が少なく、さらには排水、排液、解重合触媒などを再利用することができるため廃棄物の削減が可能です。

再生PET原料



現在は、パイロットプラントを松山事業所内に設置して実証試験を進めています。
さらに高品質なリサイクルポリエステル原料の生産と環境負荷低減を実現するリサイクル技術の開発に向けて改良を重ねています。

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